【孫に生前贈与するのが本当に最適?】孫に財産を渡す方法8選!孫の相続・生前贈与の注意点
この記事の監修者
遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士
医療に特化した個人会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、相続専門の税理士法人シーガルを設立。
相続のプロとして相続税申告・相談・セミナー講師と多岐に活動中です!
中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、相続専門の税理士法人シーガルを設立。
難しい相続の専門用語を使わず、わかりやすく説明することをモットーとしています!
祖父母から孫に財産って渡せるんですか?
孫に財産を渡すことは可能です!
本来、孫に財産がわたるまでに相続税は「親から子へ」、「子から孫へ」と2回かかりますが、孫に直接渡すことが出来れば相続税(贈与税)は1回限りで済みますね。
つまり、子を経由せずに、孫に直接財産を渡す場合メリットがあるってことですね!
そうです!
しかし、注意点をしっかり抑えておかないと相続トラブルや、税務調査での追徴課税といったことに陥ってしまうことがあります。
相続トラブル!?
追徴課税!?
安心してください!!
注意点を抑えれば、孫に財産を渡して賢く節税することができますよ。
神奈川県茅ヶ崎市にある茅ヶ崎市、藤沢市、鎌倉市の相続に強い税理士法人シーガルです。
この記事では以下の疑問を解決できます。
- 「孫に財産は渡せるのか?」
- 「孫に財産を渡すには、どのような方法で渡すのがいい?」
- 「孫に財産を渡す場合のメリットデメリットは?」
孫に財産は渡せるのか?
私たちが生前の相続対策サポートをさせていただく中で、多くご質問いただく内容として「孫に財産を直接渡せますか?」という質問があります。
結論として、「孫に財産を直接渡すことは可能」です。
財産は「親から子」へ、そして「子から孫」へという順番で財産が引き継がれますので、通常の流れで孫へ財産を渡す場合、相続税が2回発生します。
これに対して、親から孫へ直接財産を渡すことが出来れば、1回分の相続税を回避することができます。
そのため、孫へ直接財産を渡すことにより、相続税を節税できるので生前の相続税対策として有効です。
今回は、孫へ財産を渡す方法を8つご紹介します。
それぞれの方法だけでなく注意すべきポイントも解説していきますよ♪
①生前贈与で渡す(暦年課税)
生前贈与とは、自分が生きている間に自分の財産を誰かに無償で与えることをいいます。
相続は、自分が亡くなった時点で自分の財産が相続人へ引き継がれますが、生前贈与であれば誰に対しても行うことができるため、相続人ではない孫に財産を渡すことも可能です。
生前贈与は、大きく2種類に大別されます。
ここでは暦年課税方式について解説します。
暦年課税方式であれば、生前贈与を受けた孫は、1年間の生前贈与を受けた財産の合計が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。
110万円の基礎控除を超えて生前贈与した場合には贈与税がかかります。
また、生前贈与を受けた年の1月1日時点において、孫が18歳以上である場合には、「特例税率」という贈与税が軽減される制度を使って贈与税を計算することができます。
さらに、通常であれば孫は相続人として財産を相続することはありませんので、生前贈与された財産について生前贈与加算の適用はありません。
つまり、生前贈与で孫に財産を渡すことは、相続税の節税策として有効です。
ただし、生前贈与(暦年課税方式)で孫に財産を渡そうとする場合、以下注意すべき点が2つあります。
注意点①名義預金(名義財産)
生前贈与の成立要件は民法に明文化されています。
わかりやすく説明すると、「あげる人」が自分の財産を相手に無償で与える意思表示をし、「もらう人」が受諾することによって生前贈与が成立するとされています。
よくあるケースとして、孫は生前贈与を受けたことを知らずに、祖父母自身が孫の口座を作りお金を貯金していることがよくあります。
この場合には、孫はお金をもらった意思表示をしていませんので、生前贈与は成立していません。
つまり、孫名義で口座をつくったとしても、そこに貯蓄されたお金は孫のものとならず、祖父母の財産であるものとされます。
これを「名義預金」や「名義財産」といいます。
名義預金(名義財産)は、相続税申告の税務調査があった際には、税務署から「財産の申告漏れではないですか?」と必ずと言っていいほど指摘されます。
そのため、生前贈与を行う場合には、贈与契約書を作成し保管しておくことを推奨します。
注意点②孫の自立への影響
孫が生前贈与を受けることで、若い時から大金を持ってしまった場合、自立しなくなってしまう可能性があります。
また、祖父母の想いとは別の用途で、孫がお金を浪費してしまうリスクがありますので注意が必要です。
生前贈与をする場合には、お金の送金だけでなく、お金の使い道や重要性、想いを伝えることがとても大切です。
②生前贈与で渡す(相続時精算課税制度)
暦年課税とは別の、もうひとつの生前贈与である相続時精算課税制度でも孫に財産を渡すことができます。
相続時精算課税制度を採用する場合、累計2,500万円までの生前贈与については贈与税がかかりません。
さらに令和6年1月以降は、相続時精算課税制度でも110万円の基礎控除が使えますので、多くの方にとって相続時精算課税制度を選択することで節税することが可能です。
相続時精算課税制度の適用要件や、「暦年課税方式」と「相続時精算課税制度」のどちらを使った方がいいのか。など、相続時精算課税制度の詳細については、以下記事でわかりやすく解説しています。
なお、生前贈与(相続時精算課税方式)で孫に財産を渡そうとする場合、以下注意すべき点が3つあります。
注意点①名義預金(名義財産)
名義預金(名義財産)については、「①生前贈与で渡す(暦年課税)」で解説した内容と同じであるため割愛します。
以下リンクをご確認ください。
注意点②孫の自立への影響
孫の自立への影響については、「①生前贈与で渡す(暦年課税)」で解説した内容と同じであるため割愛します。
以下リンクをご確認ください。
注意点③相続時に持ち戻される
「相続時精算課税制度」は、その名の通り「相続時」に生前贈与した分を「精算(つまり加算)」して「課税」する「制度」ですので、生前贈与した人が亡くなったときの相続税では、生前贈与した財産も故人の財産に含めて相続税が課税されます。
つまり納税のタイミングが、生前贈与時点なのか相続時点なのかの違いだけで、年間110万円以上の生前贈与については、結局税金は課税されてしまう点に注意が必要です。
相続時精算課税制度の注意点については、以下記事でわかりやすく解説しています。
③生前贈与で渡す(住宅取得の特例)
これまで、生前贈与は「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の2種類と伝えておりましたが、実はこれ以外に特例がいくつか存在します。
ここでは、18歳以上の孫が自宅を購入するときの「住宅取得等資金の贈与」という贈与税の特例制度についてわかりやすく解説します。
祖父母から孫が、自宅の購入に充てるためのお金の生前贈与を受け、一定の要件を満たすことで、贈与税が非課税となります。
この非課税は、年間110万円までの基礎控除とは別に非課税枠があります。
「住宅取得等資金の贈与」という贈与税の特例制度を使う場合には、以下1つの注意点があります。
注意点①贈与税申告が必要
「住宅取得等資金の贈与」の特例制度は、自宅の購入に関する契約日や、そのほかの要件によって非課税枠が異なります。
また、非課税枠以内のため贈与税がかからない場合であっても、贈与税申告は必ず行わなければなりません。
「住宅取得等資金の贈与」の特例制度を使う場合には、生前贈与を受けた年の翌年3月15日までに税務署に贈与税申告書の提出が必要です。
④生前贈与で渡す(教育資金の特例)
孫へ教育資金に充てるために生前贈与する場合には、「教育資金の一括贈与」という贈与税の特例制度が使えます。
「教育資金の一括贈与」とは、30歳未満の孫に教育資金として最大1,500万円までの生前贈与について非課税となります。
しかし、「教育資金の一括贈与」という贈与税の特例制度を使う場合には、以下2つの注意点があります。
注意点①未使用分は贈与税がかかる
孫が30歳になるまでに教育資金として使わなかった残額がある場合には、孫が30歳になった時点において贈与税が課税されます。
注意点②生前贈与加算
孫が23歳以上である時点において、生前贈与した祖父母が亡くなってしまった場合には、亡くなった日から7年以内の生前贈与の残額は、孫に相続税がかかってしまいます。
また、相続税の2割加算の対象にもなります。
⑤生前贈与で渡す(結婚子育ての特例)
18歳以上50歳未満の孫に、結婚子育て資金として生前贈与する場合、最大1,000万円までの生前贈与が非課税となります。
これは「結婚子育て資金の贈与」という贈与税の特例制度です。
「結婚子育て資金の贈与」という贈与税の特例制度を使う場合には、以下2つの注意点があります。
注意点①生前贈与加算
「結婚子育て資金の贈与」という特例制度を使って生前贈与した祖父母が亡くなった場合、結婚子育て資金として使わなかった残額について贈与税がかかります。
ちなみに「教育資金の一括贈与」制度については、亡くなった日から7年以内に生前贈与があったものについてのみ生前贈与加算の対象となりますが、「結婚子育て資金の贈与」は、7年以内の生前贈与に限らず、必ず生前贈与加算の対象となる点に注意が必要です。
また、相続税の2割加算の対象にもなります。
⑥遺言書を作成する
通常、孫は民法上の法定相続人ではないため、祖父母の財産を相続できません。
そのため、孫に相続で財産を渡すには、遺言書を作成し「孫に財産を渡す旨」を記載しておく必要があります。
ただし、遺言書を作成し、孫に相続で財産を渡そうとする場合、以下注意すべき点が3つあります。
注意点①相続税の2割加算
「相続税の2割加算」とは、相続財産を取得する人が、亡くなった方の「一親等の血族」、「その一親等の血族の代襲相続人」、「配偶者」以外の場合には、相続税が2割加算される制度です。
つまり相続税の2割加算は、「本来相続する人ではないから通常の2割増しの相続税を払ってね。」という制度ということです。
そのため、孫が遺言により財産を取得した場合に納税する相続税は通常の1.2倍となりますので注意が必要です。
注意点②生前贈与加算
「生前贈与加算」とは、故人が亡くなった日から7年以内に生前贈与を受けていた場合、生前贈与を受けた財産を相続財産に足し戻し、相続税額を計算する制度です。
この生前贈与加算の対象者は、相続や遺言により財産を取得した人に限られます。
本来、孫であれば相続人とならないため、この生前贈与加算の対象ではないのですが、遺言により孫に財産を相続する場合には、「遺言により財産を取得した人」に該当し、生前贈与加算の対象となってしまいます。
注意点③遺留分
「遺留分」とは、法定相続人(兄弟姉妹以外)に最低限保証された遺産の取得分をいいます。
つまり遺留分は「最低限この割合だけは遺産を取得できる」と主張できる受取分を指します。
例えば、「孫にすべての財産を渡す」と書いてしまうと遺留分の問題が出てきます。
孫が叔父さんや叔母さんから遺留分侵害請求を受けてしまい、遺言が原因で親族間トラブルにといったことになりかねません。
そうならないためにも、遺留分を侵害しない遺言書を作成するように注意しましょう。
⑦生命保険を活用する
遺言書を作成することに抵抗がある方は、死亡保険金の受取人を孫とする方法を検討しましょう。
死亡保険金の受取人を孫とすることで、相続時に孫へ財産を渡すことができます。
ただし、死亡保険金の受取人を孫として、孫に相続で財産を渡そうとする場合、以下注意すべき点が3つあります。
注意点①相続税の2割加算
相続税の2割加算については、「⑥遺言書を作成する」で解説した内容と同じであるため割愛します。
以下リンクをご確認ください。
注意点②生前贈与加算
生前贈与加算については、「⑥遺言書を作成する」で解説した内容と同じであるため割愛します。
以下リンクをご確認ください。
注意点③死亡保険金の非課税枠は使えない
相続税の計算では「死亡保険金の非課税枠」という、500万円×法定相続人の数までの死亡保険金については相続税がかかりません。
ただし、死亡保険金の非課税枠については、民法上の相続人だけが適用を受けることができます。
そのため、孫が死亡保険金を受け取った場合には、非課税とならずに相続税の計算に含まれることになりますので注意が必要です。
⑧孫を養子にする
孫と養子縁組すれば、祖父母と孫に法律上の親子関係が生じ、孫を相続人とすることができます。
孫を養子とすることで、法定相続人が一人増えます。
法定相続人が増えることで以下メリットが受けられ、節税効果があります。
- 相続税の基礎控除が600万円増加
- 死亡保険金の非課税枠が500万円増加
- 死亡退職金の非課税枠が500万円増加
- 相続税率が下がる可能性がある
ただし、孫を養子にして、孫に相続で財産を渡そうとする場合、以下注意すべき点が5つあります。
注意点①相続税の2割加算
相続税の2割加算については、「⑥遺言書を作成する」で解説した内容と同じであるため割愛します。
以下リンクをご確認ください。
注意点②生前贈与加算
生前贈与加算については、「⑥遺言書を作成する」で解説した内容と同じであるため割愛します。
以下リンクをご確認ください。
注意点③節税効果は1人まで
養子縁組により、相続税の計算上、増やせる法定相続人は1人まで(子供がいない場合には2人まで)とされておりますので、孫を何人も養子縁組しても、節税効果は1人分(2人分)しか受けられません。
注意点④手続きが煩雑
養子となった孫は、法定相続人ですので、遺産分割協議に参加することとなります。
また、孫が未成年の場合には代理人(特別代理人)が必要となりますので、手続きが煩雑になってしまいます。
手続きが煩雑になることを防ぐためには、遺言書を作成し残しておくことが重要です。
注意点⑤孫の名字が変わってしまう
孫を養子縁組することによって、孫の名字が祖父母と同じ苗字となります。
苗字が同じであれば問題ないですが、もし違うのであれば孫が嫌がることもありますので注意が必要です。
養子縁組は、相続税の節税効果はありますが、親と兄弟になる孫の気持ちをよく考えて進めていく必要があります。
孫に財産分与できる?よくある間違い
お客様から相談いただく際に、よくある間違いとして「孫に財産分与できますか?」とご相談いただくことがあります。
「財産分与」と「遺産相続」を混同されている方が多いのですが、「財産分与」とは、夫婦が離婚する際に共有財産を分けることを意味する言葉です。
正しくは、「孫に遺産相続できますか?」ということとなりますので注意が必要です。
ちなみに、Googleの検索キーワードでも「孫 財産分与」と出てくるので本当によくある間違いのようですね。
おわりに
今回は孫に財産を渡す方法と注意点を8つご紹介しました。
どの方法を選択するのがいいのかは、祖父母と孫の関係性や、祖父母がお持ちの遺産規模によって人それぞれです。
人によっては、110万円以上の生前贈与を行い、贈与税を払ってでも多額の生前贈与を行った方が、結果的に相続税が安くなることもあります。
これを「最適贈与額」といいますが、最適贈与額を把握するためには、相続税額の試算が必須です。
孫に財産を渡す最適な方法や、最適贈与額を把握して安心して財産を孫に託したい場合には、相続税や贈与税に強い税理士に相談することをオススメします。
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