【贈与税の時効は成立しない?】過去の判例を基に税理士が贈与税の時効を解説

この記事の監修者

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療に特化した個人会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、相続専門の税理士法人シーガルを設立。
相続のプロとして相続税申告・相談・セミナー講師と多岐に活動中です!

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、相続専門の税理士法人シーガルを設立。
難しい相続の専門用語を使わず、わかりやすく説明することをモットーとしています!

贈与税の時効はいつですか?

税理士

贈与税の時効は原則6年です。
ただし、脱税行為など悪質な場合は7年になりますよ。

意外と時効って短いんですね!
時効が過ぎていれば贈与税の申告漏れがあったとしても問題ないってことですよね?

税理士

そんなことありません!!!!
そもそも贈与税の時効ってそう簡単には成立しないんです。

贈与税には時効があります。
今回は、贈与税の時効について贈与税に強い税理士がわかりやすく解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで次の悩みを解消できます。

  • 贈与税の時効はいつ?
  • 「贈与税の時効は、何年前までさかのぼる?
  • 「贈与税の時効は、成立しない?
  • 名義預金がある場合の贈与税の時効はどうなる?」
  • 「贈与税の時効に関する過去の判例は?
目次

贈与税の時効はいつ?

贈与税の時効は6年、悪質な場合は7年

贈与税の時効は原則6年です。

ただし、意図的に贈与税を申告しなかった場合などいわゆる脱税行為があった場合には、時効は7年に延長されます。

贈与税の時効の起算日

贈与税の時効の起算日は、「贈与があった年の贈与税の確定申告期限の翌日」です。

贈与税の確定申告期限は、贈与があった年の翌年3月15日ですので、その翌日である3月16日が起算日となります。

具体的には、2024年3月1日に贈与があった場合、贈与税の時効の起算日は2025年3月16日です。

つまり、この場合の贈与税の時効は、2025年3月16日の6年後である2031年3月15日(悪質な場合は2032年3月15日)が時効となります。

贈与税の時効が成立しないケース

贈与税の時効である6年若しくは7年を経過した後であれば、税務署に申告漏れがバレたとしても問題ないのか?

そんなことはありません!!!


ここでは、よくある贈与税の時効が成立しないケースを2つご紹介します。

そもそも贈与自体が成立していない場合(名義預金)

贈与税の時効が成立していないケースの1つとしてよくあるのが、「そもそも贈与自体が成立していないケース」です。

いわゆる「名義預金」と呼ばれるものですね。

具体的には、祖父母が子や孫名義の預金口座をつくりお金を積み立てていたり、専業主婦(夫)が配偶者の収入を自身の名義で管理していたりするケースです。

「贈与」は、贈与をする人が贈与を受ける人に「あげるよ」という意思を表示し、贈与を受ける人が「もらうよ」と受諾することによって成立する契約であると民法549条において定められています。

【民法549条(贈与)】

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

つまり、祖父母が子や孫名義の預金口座をつくりお金を積み立てていたりするケースは、贈与をする祖父母は無償でお金を孫にあげることを認識していますが、贈与を受ける子や孫は贈与を受けたことを認識していないので、贈与が成立していません。

名義預金と判断される場合には、そもそも贈与はなかったとされるため、贈与税の時効は成立しないんです。

そして名義預金は、贈与をした人が亡くなったときの相続税の課税対象になってしまうのです。

【過去の判例】悪質な脱税行為である場合

過去の判例で、悪質な行為であるとして贈与税の時効が認められなかったケースがあります。

不動産の贈与を受けた納税者は贈与契約書を公正証書で作成していましたが、贈与を隠蔽するために不動産の名義変更手続きを行わず放置していました。

そして、時効である7年を経過した後に不動産の名義変更手続きを行ったのです。

税務署はこの事実を知り、名古屋地裁で争うこととなりました。

裁判の結果は、納税者の敗訴!

脱税目的で作成された公正証書の贈与契約書は無効であると判断され、贈与税の時効は成立しないということとなりました。

【名古屋地裁平成9年(行ウ)第7号贈与税決定処分取消請求事件(棄却)(原告控訴)】

不動産贈与公正証書を作成した後8年後に所有権移転登記を行った場合、公正証書作成時期に贈与があったとは認められないとされた事例

 納税者の父は、昭和60年3月14日に不動産贈与契約公正証書を作成した。納税者は、平成5年12月に所有権移転の登記を行った。課税庁は、この不動産の贈与について平成5年分の贈与税決定及び無申告加算税の決定処分を行った。本件は、この取消しを求めたものである。

 名古屋地裁は、本件公正証書が、本件不動産を納税者に贈与しても、贈与税の負担がかからないようにするためにのみ作成されたのであり、昭和60年には贈与がなされたものとは認められないと判示しました。

そうすると本件は、書面によらない贈与に該当し、不動産の引渡し又は所有権移転登記がなされたときにその履行があったとされ、本件においては、納税者は本件不動産に従前から居住しており、本件登記手続よりも前に、本件不動産の贈与に基づき本件不動産の引渡しを受けたというような事情は認められないから、本件登記手続がなされたときをもって本件不動産の贈与に基づく履行があり、その時点で本件不動産を贈与に基づき取得したと見るべきであると判断して納税者の主張を退けました。

 高裁は、控訴を棄却しました。また、上告も棄却されています。

TAINS(Z205-7382)

おわりに

贈与税の時効は最長でも7年ですが、無申告が発覚した場合には、本来払うべきだった贈与税だけでなく、多額の追徴課税がなされます。

この負担を受けることとなるのは、贈与をした人ではなく、贈与を受けた子や孫が負担することとなります。

場合によっては社会的な信用を失う恐れがありますので、脱税行為は絶対に行わないようにしましょう。

また、贈与税の時効はありますが簡単には成立しないため注意が必要です。

贈与をする際には、税理士に相談することを推奨します。

税理士法人シーガルでは
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