【生前贈与は現金手渡しでもバレる?】なぜ税務署にばれる?税務署にばれるとどうなる?

この記事の監修者

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療に特化した個人会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、相続専門の税理士法人シーガルを設立。
相続のプロとして相続税申告・相談・セミナー講師と多岐に活動中です!

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、相続専門の税理士法人シーガルを設立。
難しい相続の専門用語を使わず、わかりやすく説明することをモットーとしています!

生前贈与は年間110万円を超える場合には贈与税がかかります。

そこで、「生前贈与を現金手渡しでこっそり行えば贈与税を回避できるのではないか」と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
もしも、税務署に現金手渡しの生前贈与の申告漏れがばれると、重加算税や延滞税などのペナルティが生じてしまう等、大きなデメリットと危険性があります。

そこで今回は、「生前贈与は現金手渡しでもばれるのか?」「現金手渡しの生前贈与でも税務署になぜばれるのか?」「現金手渡しの生前贈与が税務署にばれるとどうなるのか?」という疑問について相続税に強い税理士が徹底解説します。

本記事を最後までお読みいただくことで以下の疑問を解決することができます。

  • 「生前贈与は現金手渡しでも税務署にばれる?
  • 「現金手渡しの生前贈与でも税務署にばれる理由は?
  • 「現金手渡しの生前贈与が税務署にばれるとどうなる?
  • 「生前贈与を現金手渡しで行う際の注意点は?
目次

生前贈与は現金手渡しでもばれる?

生前贈与は年間110万円を超える場合には贈与税がかかります。

そこで、「生前贈与を現金手渡しでこっそり行えば贈与税を回避できるのではないか」と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。

生前贈与を現金手渡しで行う場合、通帳などの記録に残らず、お金のやり取りは外に漏れないので税務署にはばれないだろうという考えかと思います。

結論としては、生前贈与を現金手渡しで行った場合であっても確実に税務署にばれます。

現金手渡しの生前贈与でも税務署にばれる理由は?

生前贈与を現金手渡しで行った場合であっても確実に税務署にはばれます。

では、なぜ税務署に現金手渡しの生前贈与はばれてしまうのでしょうか?

理由は以下の3つが挙げられます。

  • 相続税の税務調査でばれる
  • 不動産登記でばれる
  • KSKシステムでばれる

相続税の税務調査でばれる

相続が発生すると相続税の申告に対して税務調査が行われる可能性があります。

相続税の税務調査に選ばれる確率は約12%です。
人数で表すと10人に1人以上の確率で、相続税の税務調査に選ばれている計算となります。

相続税の税務調査では故人の過去10年分の通帳明細を調査されます。

そこで大きな金額な取引や使途が不明で怪しいATM引き出しなどの過去のお金の流れについて徹底的に調べられ、現金手渡しの生前贈与の申告漏れがばれてしまいます。

不動産登記でばれる

不動産登記が行われると、その内容が法務局から税務署に提出されます。

生前贈与を現金手渡しで行い、そのお金で不動産の購入やリフォーム工事を行ったとします。

そうすると、不動産登記情報から税務署は、不動産の購入やリフォーム工事を行ったという情報を把握しますよね。

そこで税務署は「不動産の購入やリフォーム工事の資金はどこから捻出したのだろう?」と考えます。

そこで、贈与税の税務調査が入り、相続税の税務調査と同様にお金の流れを徹底的に調べられ、現金手渡しの生前贈与の申告漏れがばれてしまいます。

なお、不動産登記を行った場合には税務署から「お尋ね」が届くことがあります。そのお尋ねに対して「親から1,000万円援助してもらった」などと記載してしまうケースでも、現金手渡しの生前贈与の申告漏れがばれてしまいます。

KSKシステムでばれる

KSKシステムとは、Kokuzei Sougou Kanri(国税総合管理)システムの略称です。

このKSKシステムには過去の税申告関連のデータが全て蓄積されています。

税務署はKSKシステムを活用し、過去の申告データを調べることで「高額所得者」や「不動産所有者」などを絞り込むことが可能です。

つまり、KSKシステムによって、税務署は国民の収入や財産を把握しており、国民がおおよそどれくらいの財産を持っていたかということがばれてしまっています。

例えば現金手渡しで生前贈与を受けた方が車や不動産を購入した際に、税務署は「資金はどこから捻出したのだろう?」と考えます。

そこで、贈与税の税務調査が入り、相続税の税務調査と同様にお金の流れを徹底的に調べられ、現金手渡しの生前贈与の申告漏れがばれてしまいます。

現金手渡しの生前贈与が税務署にばれるとどうなる?

現金手渡しで行った生前贈与を無申告にしていた場合で税務署にばれるとどうなるのか?

無申告の現金手渡しの生前贈与が税務署にばれた場合、以下のリスクが考えられます。

  • 基礎控除を超える金額に対して追徴課税
  • 相続税の修正申告となる可能性もある

基礎控除を超える金額に対して追徴課税

贈与税は年間110万円の基礎控除以下であれば贈与税がかかりません。

そのため、生前贈与として現金手渡しした金額が年間110万円以下であれば問題ありません。

問題が生じるのは、生前贈与として現金手渡しした金額が年間110万円を超える場合です。

この場合、生前贈与として現金手渡しした金額に対して10%〜55%の税率で贈与税が計算されます。

つまり、生前贈与の現金手渡しがあったことが明らかになった場合、その現金手渡し分にかかる贈与税の納税と、ペナルティとしての追徴課税が生じます。

相続税の修正申告となる可能性もある

仮に、相続税の税務調査で、生前贈与として現金手渡しした金額は「贈与ではなく、名義財産である!」とされた場合には、贈与税はかかりません。

しかし、名義財産については「故人の相続財産」として相続税の対象となるため、相続税の修正申告を求められます。

つまり、生前贈与として現金手渡しした金額については贈与税はかからないものの、相続税が追加で生じてしまうということとなります。

生前贈与を現金手渡しで行う際の注意点

生前贈与を行う場合、以下2つの点に注意して生前贈与を行う必要があります。

  • 贈与契約書を作成し保管しておく
  • 亡くなった日の直近7年間分の生前贈与は相続税の課税対象になる

贈与契約書を作成しておく

「贈与」は、贈与をする人が贈与を受ける人に「あげるよ」という意思を表示し、贈与を受ける人が「もらうよ」と受諾することによって成立する契約であると民法549条において定められています。

【民法549条(贈与)】

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

つまり、「贈与」は贈与者と受贈者の双方の合意があれば、口約束でも契約が成立します。

しかし、生前贈与を現金手渡しで行いたい場合には、贈与契約書を作成することを推奨します。


贈与契約書を作成する理由は、贈与契約の内容を記録し、贈与の履行があったことを客観的に証明するためです。

贈与契約書が無ければ、仮に税務調査があった場合に「本当に贈与は行っていたの?」といわれ、名義預金と判断されてしまう恐れがあります。

名義預金とされた場合には、相続税の課税対象となってしまうため注意が必要です。

亡くなった日の直近7年間分の生前贈与は相続税の課税対象になる

亡くなった日の直近7年間分の生前贈与は相続税の課税対象になります。

つまり、生前贈与で現金手渡しした本人が亡くなった際には、直近7年間に手渡しした生前贈与の金額は全て相続税申告する必要がありますので注意が必要です。


この期間は、2023年までの贈与については「3年」でしたが、2024年以降は改正により段階的に加算する期間が延長され、2031年以降については「7年」になります。

おわりに

生前贈与を現金手渡しで行うことは決して悪いことではありません。

しかし、生前贈与を現金手渡しで行った場合であっても確実に税務署にばれますので無申告はやめましょう。

また、生前贈与として現金手渡しした金額が、名義財産とされないためにも必ず贈与契約書は作成しておき大切に保管しましょう。

生前贈与を行う場合には、相続税・贈与税に強い税理士に相談して実行されることを推奨します。

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