【相続放棄の相続税計算への影響】相続放棄すると相続税の計算は何が変わる?

この記事の監修者

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療に特化した個人会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、相続専門の税理士法人シーガルを設立。
相続のプロとして相続税申告・相談・セミナー講師と多岐に活動中です!

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、相続専門の税理士法人シーガルを設立。
難しい相続の専門用語を使わず、わかりやすく説明することをモットーとしています!

神奈川県茅ヶ崎市にある茅ヶ崎市、藤沢市、鎌倉市の相続に強い税理士法人シーガルです。

故人が多額の借入をしており債務超過の状態で亡くなったとき、「相続放棄」を行うことで多額の借入の返済義務を承継しなくて済みます。

また、相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったとみなされるので、遺産分割協議に参加する必要がなくなり、遺産分割トラブルを回避することが可能です。

今回は、相続放棄をすると相続税はかからないのか?または相続税が増えるのか?「相続税放棄があった場合の相続税の計算方法はどう変わるのか?」について相続税に強い税理士が徹底解説します。

本記事を最後までお読みいただくことで以下の悩みを解消できます。

  • 「相続放棄をすると相続税はかからない?相続税は増える?
  • 「相続放棄があった場合の相続税の計算方法は?」
  • 「相続放棄があった場合の相続税申告の添付書類は何が必要?」
  • 生前贈与を受けていても相続放棄はできるの?」
目次

相続放棄とは?

相続放棄とは、故人の財産や負債を相続する権利及び義務を放棄することです。

財産よりも債務が多い場合、相続放棄を選択すれば、故人の財産及び債務を一切相続しないようにすることが可能です。

相続放棄を受けるためには、故人が亡くなった日から3ヶ月以内に故人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述しなければなりません。

相続放棄が認められれば、その相続人は初めから相続人ではなかったとみなされます。

相続放棄をすると相続税はかからない?相続税は増える?

相続放棄をした本人

相続放棄をした本人は基本的に相続税はかかりません。

相続税がかからない理由は、相続放棄をすると相続放棄をした本人は、故人の財産・債務を一切相続しないこととなるためです。

ただし、相続放棄をした人が受取人になっている死亡保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」がある場合や、相続放棄をした人が過去に「相続時精算課税制度」を利用して故人から生前贈与を受けていた場合には、相続放棄をしたとしても基礎控除を超える場合には相続税がかかります。

相続放棄があった場合の他の相続人

相続放棄があった場合でも、他の相続人の相続税の総額が増えることはありません。

相続放棄があった場合でも、法定相続人の数は変わりませんので相続税の基礎控除額は減りません。
つまり、相続放棄があった場合でも相続税の総額が増えることはありません。

ただし、相続放棄があった場合には、相続放棄をした本人が相続しない分を、相続放棄をされた他の相続人が多めに相続することになるため、それぞれが負担する相続税は増えるということになります。

相続放棄があった場合の相続税の計算方法はどう変わる?

相続税の基礎控除額

相続放棄があった場合でも、基礎控除額は変わりません。

民法上、相続放棄があった場合、相続放棄した人は初めから相続人でなかったものとして扱われます。

【民法939条】(相続の放棄の効力)
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす

民法939条(相続の放棄の効力)


一方で相続税法上は、相続放棄があった場合でも、相続放棄がなかったものとして法定相続人の人数を数えることとされています。(相続税法第15条2項

つまり、相続放棄をした人も法定相続人の数に含まれますので、基礎控除額は相続放棄があった場合でも変わりません。

【相続税法第15条】(遺産に係る基礎控除)

相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。

 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。

 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人

 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人

相続税法第15条2項

代襲相続

相続放棄があった場合、相続放棄をした人に代襲相続は発生しません。

前述した通り、民法では相続放棄があった場合、相続放棄した人は初めから相続人でなかったものとして扱われます。
そのため、代襲相続も相続放棄をした人には発生しません。

【民法939条】(相続の放棄の効力)
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす

民法939条(相続の放棄の効力)

みなし相続財産(死亡保険金・死亡退職金)の非課税枠

相続放棄があった場合でも、みなし相続財産の非課税枠は変わりません。

相続税の基礎控除額と同様に、みなし相続財産の非課税枠は法定相続人の数に相続放棄した人を含めて計算します。

なお、死亡保険金は受取人固有の権利です。

つまり、相続放棄した人が死亡保険金の受取人に指定されている場合には、相続放棄した場合であっても死亡保険金を受け取ることが可能です。

ただし、相続放棄をした人が死亡保険金・死亡退職金を受け取る場合には非課税の適用はありませんので注意が必要です。

【No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限られます。)で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続等により取得したとみなされて、相続税の課税対象となります。

この死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。

(注1) 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。

(注2) 法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

法定相続人の数に含める養子の数の制限については、コード4170「相続人の中に養子がいるとき」を参照してください。

No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|国税庁

【No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金】

相続人が受け取った退職手当金等は、その全額が相続税の対象となるわけではありません。

すべての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)が取得した退職手当金等を合計した額が、非課税限度額以下のときは課税されません。

非課税限度額は、次の式により計算した額です。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

なお、相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はありません。

(注1) 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。

(注2) 法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

法定相続人の数に含める養子の数の制限については、コード4170「相続人の中に養子がいるとき」を参照してください。

No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|国税庁

相続時精算課税制度を利用していた場合

相続放棄をした人が過去に「相続時精算課税制度」を利用して故人から生前贈与を受けていた場合には、相続放棄をしたとしても基礎控除を超える場合には相続税がかかります。

債務控除

相続放棄をした人は、債務控除の対象とはなりません。

ただし、相続放棄をしたとしても葬式費用については債務控除が可能です。

相続放棄したということは相続人ではないということになり、財産も債務も相続しません。
そのため、債務控除の適用はありません。

ただし、相続放棄した人が葬式費用を負担している場合、葬式費用に関しては「遺贈により取得した財産の価額」から控除が可能です。

【相続税基本通達13-1】(相続を放棄した者等の債務控除)

13-1 相続を放棄した者及び相続権を失った者については、法第13条の規定の適用はないのであるが、その者が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合においては、当該負担額は、その者の遺贈によって取得した財産の価額から債務控除しても差し支えないものとする。

第13条《債務控除》関係|国税庁

相続税の2割加算

相続放棄をしたとしても、一親等の血族であれば2割加算はされません。

相続放棄をしたとしても、故人の死亡保険金や死亡退職金を受け取る場合があります。

死亡保険金や死亡退職金は、故人の財産ではありませんが相続税の計算上、みなし相続財産として相続税の課税の対象になります。

つまり、相続放棄をしたとしても相続税がかかる可能性がありますが、相続放棄をしたとしても一親等の血族であれば2割加算はされません。

配偶者の税額軽減

相続放棄をしたとしても、配偶者の税額軽減は適用できます。

配偶者が相続放棄したとしても、死亡保険金や死亡退職金を受け取る場合があります。

死亡保険金や死亡退職金は、故人の財産ではありませんが相続税の計算上、みなし相続財産として相続税の課税の対象になります。

つまり、配偶者が相続放棄をしたとしても相続税がかかる可能性がありますが、相続放棄をしたとしても配偶者の税額軽減は適用できます。

【相続税基本通達19の2-3】(相続を放棄した配偶者に対する相続税額の軽減)
19の2-3 配偶者に対する相続税額の軽減の規定は、配偶者が相続を放棄した場合であっても当該配偶者が遺贈、令5課資2-21により取得した財産があるときは、適用があるのであるから留意する。(昭41直審(資)5、昭42直審(資)5、令元課資2-10改正)

第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係|国税庁

未成年者控除

相続放棄をしたとしても、未成年者控除は適用できます。

未成年者である相続人が相続放棄したとしても、死亡保険金や死亡退職金を受け取る場合があります。

死亡保険金や死亡退職金は、故人の財産ではありませんが相続税の計算上、みなし相続財産として相続税の課税の対象になります。

つまり、未成年者である相続人が相続放棄をしたとしても相続税がかかる可能性がありますが、相続放棄をしたとしても未成年者控除は適用できます。

No.4164 未成年者の税額控除

未成年者控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。

(1) ①相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)、または②相続や遺贈により財産を取得したときに日本国内に住所がない人でも次のいずれかに当てはまる人

イ 日本国籍を有しており、かつ、その人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人

ロ 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が、外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)

ハ 日本国籍を有していない人(被相続人が、外国人被相続人、非居住被相続人または非居住外国人である場合を除きます。)

(注) 「一時居住者」、「外国人被相続人」、「非居住被相続人」および「非居住外国人」については、コード4138「相続人が外国に居住しているとき」をご覧ください。

(2) 相続や遺贈で財産を取得したときに18歳(注)未満である人

(注) 「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の相続または遺贈については「20歳」となります。

(3) 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。

No.4164 未成年者の税額控除|国税庁

障害者控除

相続放棄をしたとしても、障害者控除は適用できます。

障害者である相続人が相続放棄したとしても、死亡保険金や死亡退職金を受け取る場合があります。

死亡保険金や死亡退職金は、故人の財産ではありませんが相続税の計算上、みなし相続財産として相続税の課税の対象になります。

つまり、障害者である相続人が相続放棄をしたとしても相続税がかかる可能性がありますが、相続放棄をしたとしても障害者控除は適用できます。

No.4167 障害者の税額控除

障害者控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。

(1) 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)

(注) 「一時居住者」、「外国人被相続人」および「非居住被相続人」については、コード4138「相続人が外国に居住しているとき」をご覧ください。

(2) 相続や遺贈で財産を取得したときに障害者である人

(3) 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。

No.4167 障害者の税額控除|国税庁

相次相続控除

相続放棄をした人は、相次相続控除は適用できません。

前述の通り、相続放棄をしたとしてもその放棄がなかったものとして計算するというような規定がたくさんあります。

そのため、相次相続控除についても相続放棄をしたとしても適用できるのでは?とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、相続放棄をした人は相似相続控除は受けられません。

【相続税基本通達20-1】(相続を放棄した者等の相次相続控除)
20-1 相続を放棄した者及び相続権を失った者については、たとえその者について遺贈により取得した財産がある場合においても、相次相続控除の規定は適用されないのであるから留意する。

第20条《相次相続控除》関係|国税庁

相続放棄があった場合の相続税申告の添付書類は?

相続放棄申述受理証明書を添付する必要があります。

家庭裁判所に相続放棄の申述をして受理されると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されてきます。

その後「相続放棄申述受理証明書」の発行を申請することで、相続放棄申述受理証明書を取得することができます。

相続税申告を行う際には、他にもたくさんの添付書類があります。

(参考) 相続税の申告の際に提出していただく主な書類|国税庁

生前贈与を受けていても相続放棄はできるの?

生前贈与を受けていたとしても相続放棄はできます。

生前贈与と相続放棄は別の手続きであり、生前贈与を受けていたとしても相続放棄はできます。

ただし、「詐害行為取消権」に注意が必要です。

詐害行為取消権とは、債務者が行った「詐害行為」を取り消すよう裁判所に請求できる権利をいいます。

詐害行為とは、債務者が不当に財産を処分や譲渡をすることにより、債権者に財産が渡らないようにする行為を言います。

つまり、故人に借金があることを知りつつ、相続人が故人から生前贈与を受けた場合には、この生前贈与は「詐害行為と判断されて、生前贈与を取り消される可能性があるということを知っておきましょう。

【民法第424条】(詐害行為取消請求)

第四百二十四条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

民法第424条

「相続放棄」と「遺産放棄」の違いは?

「相続放棄」「遺産放棄」は、似て非なる言葉です。

相続放棄とは、初めから相続人ではなかったという法的な効果を生じさせる手続きをいいます。
相続放棄をするには、家庭裁判所に相続放棄の申述を行う必要があります。

一方、遺産放棄とは、正式な法律用語ではなく、「私は遺産を受け取りません」という単なる意思表示です。

このように相続放棄と遺産放棄は同じ言葉のようで、全く別の意味合いになるので注意が必要です。

おわりに

今回は、相続放棄があった場合の相続税の計算方法について解説しました。

相続放棄があった場合、相続税の計算上いくつか留意すべき点があることがお分かりになられたと思います。

相続放棄は放棄する人だけでなく他の相続人にも影響があるため、相続に強い税理士・司法書士・弁護士にご相談いただくことを推奨します。

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