2025.10.13
【税理士が解説】相続人が海外に住んでいる場合の相続の留意点

相続人が海外に住んでいる場合、
「相続税の申告はどうなる?」
「手続きは複雑になる?」
といった不安を感じる方も多いでしょう。
相続人が海外に住んでいる非居住者の場合、日本の相続税だけでなく、海外の税制や手続きも考慮しなければなりません。
この記事では、海外在住の相続人がいる場合の相続について、税理士法人シーガルが日本の相続税法上の取り扱いを中心に、海外の税務・手続き上の注意点まで分かりやすく解説します。
海外在住の相続人がいても基本的な計算や期限は変わらない!
亡くなられた方(被相続人)が日本に住んでいた場合、相続人が海外に住んでいるとしても、相続税の基本的な計算や期限は、通常の相続と大きく変わりません。
納税義務者区分と課税財産の範囲
非居住者である相続人の納税義務者の区分は、原則として「非居住無制限納税義務者」に該当します。
「非居住無制限納税義務者」に該当する場合、相続人が海外に住んでいたとしても、被相続人の日本国内に所在する財産のみならず、国外に所在する財産も含め、全世界の全ての財産が日本の相続税の課税対象になります。
つまり、相続人が日本に住んでいる通常の相続と、課税対象財産の範囲は原則として何ら変わりません。

出典:No.4138 相続人が外国に居住しているとき|国税庁
相続税の申告期限・納税期限
相続税の申告期限および納税期限も、通常の相続と同じです。
原則として、相続があったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納税を行う必要があります。
期限を過ぎると延滞税が発生するため、海外からの手続きであっても注意が必要です。
海外在住の相続人がいる場合に注意すべき論点
前述した通り、海外在住の相続人がいたとしても基本原則は通常の相続と同じですが、相続人が海外に住んでいることで、いくつか手続きや特例の適用可否が変わる論点がありますので解説します。
添付書類が異なる
通常の相続税申告では、相続人の印鑑証明書や住民票を添付しますが、海外在住の場合は以下の書類を提出します。
印鑑証明書の代わり: サイン証明
住民票の代わり: 在留証明
これらは在外公館(大使館、総領事館など)で発行手続きを行えます。
障害者控除は適用なし
相続人が海外に住んでいる場合、その相続人は「非居住無制限納税義務者」に該当します。
「非居住無制限納税義務者」については障害者控除の適用を受けることができません。
ちなみに、贈与税額控除、配偶者の税額軽減、未成年者控除、相似相続控除、外国税額控除などは、通常の相続と同様に適用できます。
小規模宅地等の特例の適用要件
小規模宅地等の特例のうち、いわゆる「家なき子特例」を海外在住の相続人が適用する場合には、注意が必要です。
家なき子特例は、相続人が日本国籍を有していることが要件の一つになっているため、日本国籍を有しているかを必ず確認する必要があります。
※配偶者が相続する場合や、貸付事業用宅地等については、海外在住であっても通常の相続と変わりません
外国税額控除の適用
相続税は財産に対して課税する制度です。
日本以外の国に所在する財産に対して、海外でも相続税がかかった場合、同一の財産に二重課税が生じることとなります。
この二重課税を避けるため、日本以外の国に所在する財産に対して海外でも税金がかかった場合には、日本の相続税の計算に際して、外国の税金(相続税等)を控除できる「外国税額控除」の仕組みがあります。
納税管理人の選任と納税方法
海外に住んでいる相続人が、日本における相続税の申告手続きを行わなければならない場合には、まず「納税管理人」の選任手続きが必要です。
納税管理人は日本国内に住所または居所を有する者でなければならず、実務的には他の共同相続人や税理士などに依頼するケースが多いです。
納税管理人の選任は、所定の届出書を相続税の申告書の提出先と同じ税務署へ提出します。
相続税の納税に関しても、納税管理人が納めることになりますので、海外から日本へ送金して納税する場合、期限ギリギリとならないよう時間的余裕をもって納税資金の手配を行うことが重要です。

出典:納税管理人届出書|国税庁
国外転出時課税による準確定申告
平成27年7月1日から国外転出時課税制度は始まりました。
国外転出時課税制度は、日本居住者で、時価1億円以上の有価証券を保有しており、かつ、直近の過去10年以内に5年超日本に居住している者が、平成27年7月1日以後に、①国外転出する場合、②有価証券等を非居住者に贈与した場合、③有価証券等を相続・遺贈により非居住者に移転した場合には、その有価証券等を時価で譲渡したものとみなして、含み益に対して所得税を課税するという制度です。
相続人が海外に居住している場合で、国外転出時課税制度が適用される場合には、所得税について、準確定申告を相続開始から4ヶ月以内に相続人が行わなければなりませんので注意してください。
相続人の居住地国(海外)における相続手続き・報告義務
相続人が海外に住んでいる場合、日本の相続税だけでなく、その居住国でも税金や報告義務が発生する可能性があります。
遺産取得税方式を採用する国での課税(フランスなど)
相続人が、遺産取得税方式を採用している国(例:フランスなど)に住んでいると、相続人が取得した財産に対して、その国現地でも相続税(または遺産税などのそれに類する税)がかかる可能性があります。
このような場合、遺産取得税方式を採用している国においても相続税の申告などが必要になりますが、国内の税理士では対応することが難しいので、現地の専門家に相談することが賢明です。

遺産税方式を採用する国と報告義務(アメリカの事例)
アメリカは遺産税方式を採用しており、被相続人が日本居住者で、財産も日本国内に所在するケースでは、アメリカでは遺産税がかからないことが一般的です。
ただし、Form 3520といって、アメリカ居住者が非居住者から財産の移転を受けた場合(相続や贈与を含む)には、IRS(米国内国歳入庁)へ報告義務が課されています。
提出期限は原則として相続や贈与を受けた年の翌年の所得税確定申告書の提出期限(毎年原則として4月15日)と同日です。
この報告を怠ると、最低10,000USドルの罰則が規定されているため、とても重要な手続きになります。

相続税がない国での手続き(マレーシアの事例)
マレーシアのように、相続税(遺産税)や贈与税がない国もあります。
しかし、マレーシアで相続が発生した場合には、被相続人の遺産を相続人が承継するにあたって、特にマレーシアにある財産についてはプロベート(Probate)手続きが必要となることが一般的です。
税金がかからなくても、財産の名義変更手続きが必要である点は事前に考慮しておきましょう。

まとめ
相続人が海外に住んでいる場合の相続は、基本的な計算や期限は、通常の相続とあまり変わりません。
しかし、日本の税法だけでなく、海外の税制、そして現地の法的手続きが複雑に絡み合う場合もあり、納税管理人の選任や国外転出時課税など、国内の相続とは異なる多くの注意点が存在します。
相続税の申告漏れや二重課税、海外での罰則リスクを避けるためにも、国際相続に精通した税理士に早めに相談することをおすすめします。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。
難しく感じやすい相続の専門用語もわかりやすくご説明しますので、初めての相続の方もご安心ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療専門会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。
シーガルでは年間60件の相続税申告実績がありますので、相続に不慣れな方へも丁寧にサポートします!
