2026.6.19
一次相続が未分割のまま二次相続が発生した場合の注意点

一次相続が未分割のまま二次相続が発生した場合の注意点
相続税申告では、
「父の相続手続きが終わらないうちに、母も亡くなった」
「先代名義の不動産の遺産分割が終わっていない」
というご相談があります。
このように、最初の相続、つまり一次相続の遺産分割が終わらないまま、次の相続、つまり二次相続が発生するケースでは、相続税の計算が複雑になります。
特に注意が必要なのが、後から一次相続の遺産分割がまとまった場合に、二次相続の相続税を更正の請求で戻せるのかという点です。
国税不服審判所が公表した令和7年10月29日裁決では、この点について、納税者側の主張が認められませんでした。
国税不服審判所の公表裁決事例では、令和7年10月分から12月分の相続税法関係の事例として、この裁決が掲載されています。
この記事の結論
今回の裁決から分かる重要なポイントは、次のとおりです。
あとから一次相続の遺産分割によって、二次相続の遺産額が結果的に減ったとしても、相続税法32条の「更正の請求の特則」が当然に認められるわけではありません。
つまり、
「とりあえず未分割で申告しておいて、あとで遺産分割が決まったら税金を戻せばよい」
と単純には考えられない、ということです。
裁決事例の概要

今回の事例は、簡単に整理すると次のような内容です。
まず、父が亡くなり、一次相続が発生しました。
その後、母も亡くなり、二次相続が発生しました。
しかし、母の相続税申告の期限までに、父の相続に関する遺産分割協議がまとまっていませんでした。
そのため、二次相続の申告では、一次相続に係る遺産について、母が法定相続分で取得したものとして申告等が行われました。
その後、相続人らは一次相続と二次相続の遺産分割協議を成立させました。一次相続については、父の遺産を子どもたちが取得し、母には相続させる遺産がない、という内容でした。
これにより、二次相続に含まれる遺産の総額が減少するとして、相続人らは相続税の更正の請求を行いました。
しかし、税務署は「更正をすべき理由がない」と判断しました。
相続人らはこれを不服として審査請求をしましたが、国税不服審判所も、最終的に相続人らの主張を認めませんでした。
「更正の請求」とは?
更正の請求とは、簡単にいうと、納めた税金が多すぎた場合に、税務署に対して税額を減らしてもらうための手続きです。
相続税では、遺産分割が申告期限までにまとまらないことがあります。
その場合、いったん法定相続分で取得したものとして申告し、その後に遺産分割がまとまった場合には、一定の要件のもとで更正の請求ができることがあります。
相続税法32条1項1号は、未分割の財産について法定相続分などにより相続税を計算していた場合に、その後、遺産分割が行われ、実際の取得財産に基づく課税価格が異なることになったときの更正の請求について定めています。
また、相続税法55条は、未分割財産について、各共同相続人が法定相続分等に従って取得したものとして課税価格を計算する旨を定めています。
なぜ今回、更正の請求が認められなかったのか

今回のポイントは、どの相続についての遺産分割なのかです。
相続税法32条の更正の請求は、基本的には、同じ相続において、未分割だった遺産が後から分割された場合に、相続人間の税負担を調整するための制度です。
今回のケースでは、二次相続の申告について更正の請求をしていましたが、その理由は、二次相続そのものの遺産分割ではなく、先に発生していた一次相続の遺産分割によって、二次相続の遺産総額が減ったというものでした。
国税不服審判所は、相続税法32条1項1号に基づく更正の請求は、申告等により確定した遺産の価額を前提に判断するものであり、その価額を前提としない更正の請求は、同条の更正の請求には当たらないと判断しています。
つまり、今回の請求は、単に「未分割だったものが分割されたので各相続人の取得額を調整する」という話ではなく、二次相続の申告で前提としていた遺産の総額そのものを、後から一次相続の分割結果によって減らそうとするものと判断されたわけです。
実務上の注意点
この裁決から、相続税申告の実務では次の点に注意が必要です。

1. 未分割申告なら後で必ず直せる、とは限らない
相続税申告では、申告期限までに遺産分割がまとまらない場合、いったん未分割で申告することがあります。
しかし、未分割で申告したからといって、後からどのような分割内容になっても、必ず更正の請求で税額を戻せるわけではありません。
特に、一次相続と二次相続が連続している場合は、一次相続の分割結果が二次相続の税額にどう影響するかを慎重に検討する必要があります。
2. 一次相続の分割を後回しにすると、二次相続で不利になる可能性がある
父の相続が未分割のまま、母の相続が発生した場合、母の相続税申告では、父の遺産に関する母の取得分をどう扱うかが問題になります。
後から、
「父の遺産は母が取得しなかったことにしたい」
「母の相続財産を減らしたい」
と考えても、相続税法上、それがそのまま認められるとは限りません。
今回の裁決でも、一次相続の遺産分割によって二次相続の遺産総額が減るという主張は、相続税法32条の更正の請求としては認められませんでした。
3. 数次相続では「申告前の設計」が重要
数次相続とは、最初の相続手続きが完了しないうちに、次の相続が発生するようなケースをいいます。
たとえば、
父が亡くなった後、父名義の自宅や預貯金の分割が終わらないうちに、母が亡くなるケースです。
このような場合には、次の点を早い段階で確認する必要があります。
・一次相続の遺産分割を先にまとめられるか
・二次相続の申告期限までに分割協議が可能か
・母が一次相続でどの財産を取得する前提になるか
・小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減への影響
・後から更正の請求ができるケースか、できないケースか
申告期限が近づいてから判断すると、選択肢が限られることがあります。
シーガルでサポートできること
税理士法人シーガルでは、茅ヶ崎市・平塚市・藤沢市・鎌倉市など湘南エリアを中心に、相続税申告のご相談をお受けしています。
特に、次のようなご相談に対応しています。
・一次相続と二次相続を踏まえた遺産分割の検討
・自宅、貸地、駐車場などの不動産評価
・小規模宅地等の特例の適用可否
・申告期限が近い相続税申告
相続税申告では、後から直せると思っていた内容が、実際には思うように修正できないケースがあります。
今回の裁決は、その典型例といえます。
まとめ
一次相続の遺産分割が終わらないまま二次相続が発生した場合、相続税の計算は非常に複雑になります。
今回の裁決では、一次相続の遺産分割によって二次相続の遺産総額が減少するとしても、そのことを理由に相続税法32条の更正の請求が当然に認められるわけではない、という判断が示されました。
つまり、相続税申告は「とりあえず出して、後で直す」では危険な場合があります。
茅ヶ崎で相続税申告が必要な方、一次相続の遺産分割が終わっていない方、二次相続まで見据えて分割方法を考えたい方は、早めに専門家へご相談ください。
税理士法人シーガルでは、初めての相続でも分かりやすく、相続税申告の方針から不動産評価、遺産分割の検討まで丁寧にサポートいたします。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。
難しく感じやすい相続の専門用語もわかりやすくご説明しますので、初めての相続の方もご安心ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療専門会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。
シーガルでは年間60件の相続税申告実績がありますので、相続に不慣れな方へも丁寧にサポートします!
